恋とはなんぞや
妙に春めかしいタイトルにした。もう夏なのに。
私は恋愛をするのが苦手で、だから嫌いだ。濃い交流をするとすごく疲れる。
目の前がチカチカして頭痛がきて吐いて寝込むくらい、疲れる。
あと人間の粘膜が嫌いだ。口も体内も体外のデリケートゾーンも嫌いだ。
私は男性に対して変に潔癖なところがある。
理由はわからないが、自分よりも大きな男性の性的な部分が嫌いだ。
いや本当のところ理由はわかっている。自己嫌悪が激しいことが原因だ。ブスとブスのえっちを見たくないのだ。私が。
私はブスだから。
だからベッドの上の営みは子作りするときだけでいいと思う。それ以外の時はキリンみたいに体内にしまっておいてほしい。
そういうことを豆腐さんとハナモチさんに言ったことがある。
豆腐さんは三十路なお兄さんだ。恋愛至上主義の肉食キングらしい。
彼は私の恋愛観について「それはいけない」と言った。いろいろ説教してきたが忘れた。
たぶん豆腐さんの中では、恋愛して結婚して子孫を生み育て繁栄させることは良い事なんだろう。良い事であり常識であり、成長した人間はみんなそうなると思っている。
そして最近まで私にかなり冷たい態度をとっていたらしい。らしいというのは豆腐さん本人談である。
よくわからないが、なにかいろいろが彼にあったのか無かったのか、私への態度を改めると言われた。非常に困惑した。
たしかにいろいろ言われたような気もしたが、別にそこまで理不尽なことは言われていないしされてもいない。そもそも温かい態度に変えるときに宣言するなら、冷遇するときにも宣言すべきだ。意味がわからない。
そしていろいろ冷たくされたと思わしき記憶は、私の中からはもうほとんど消えかけている。私は記憶力が本当に無い。
つらいことをすぐに忘れてしまう。楽しいことや嬉しいこともすごくよく忘れる。
だから仕事やお客さんの顔を覚えるのもすごく大変だ。苦労している。
だから豆腐さんの態度が軟化しようとどうでもいいのだ。
でもそうも言っていられなくなった。
豆腐さんが私に恋愛をオススメしてくる。やめていただきたい。
先日もバイトの男の子を二人くらい斡旋してきてくれた。
本当に気の毒だ。
申し訳なくて悲しくなった。
私はそもそもわりと不細工だ。スタイルも良くない性格もよくない。滑舌も悪いし耳も悪い。
なにより中身が無い。相手が本当に気の毒だ。
男の子たちはものすごく気を使って褒めてくれたり会話を繋げようとしてくれたが、彼らが頑張ってくれるほど死にたくなるし悲しくなる。
頭を撫でられると申し訳ない気分が止まらない。自己嫌悪の塊である。
私の恋愛観は子供なのだと豆腐さんたちは言う。
伝わらないし理解してもらうのは難しい。
豆腐さんも、自分より20cm背が高くてガッシリした男の人に、尻にすりこ木突っ込まれれば私の気持ちがわかると思う。
もう二度と恋愛や営みをオススメしなくなると思う。