ケーキさんのとのこと
豆腐さんの彼女はハナモチさんではなかった。
あの二人はよく意見が共通していたし、私がハナモチさんだけに話したことも豆腐さんが知ってたし、てっきりそうだと思ってた。
豆腐さんの彼女はケーキさん。パンケーキおごってくれたきれいな女性。
私はこないだ、その人が店長みたいなお店に研修に行った。
ぜんぜんお客さんも少なくて静かで、気のすむまで掃除ができて良い店だった。
うちと時給が一緒で驚いた。
教わったのは正しい掃除の仕方とか挨拶とか姿勢とか、あとは細かいところをいくつか。
ケーキさんは人を上手く褒めることのできる良い人で、豆腐さんの彼女やってるのがもったいないという気がする女性だった。
研修の時間が終わって、喫茶店で報告とかアドバイスとか仕事の話をするということになった。
なんとなく「これはおごってくれるやつだな」と思った。一応お金はあったのだが非常にありがたいと思った。大人になると奢らねばならない場面が増えて辛いと思う。
そこで豆腐さんの「いままで冷遇してごめんね改善するね」宣言があり、ケーキさんを彼女として紹介された。始終イチャイチャしていた。
恒例の恋愛最高トークがあり、そのとき一緒に研修に来ていたコサラダさんを非常に推された。申し訳ない気持ちでいっぱいである。
私はイチャイチャするのが面倒くさい。隣に座って一緒に別々の本読んでるとか、ゲームしてるとか、アニメ見てるとか、各々で行動したい。
手をつなぐのも腕を組むのもやぶさかではない。幸せな気分になる。でもイチャイチャはしたくない。
背中をくっつけて本読んでるとか、抱きしめるとかのイチャイチャはいいけど、食べさせあいとか、人前でもたれかかるとかは無い。
他人のそういうのを見てるのは可愛らしいけど、自分がやったら興ざめで気持ち悪い。お前なに勘違いしてんのって頭のどこかでツッコミが入る。
自分が公害になる。
というのは他人には関係なくて、そういう話題はなんとなく流した。
ケーキさんがおごってくれたケーキさんオススメのパンケーキは、厚くて熱い生地にバニラアイスがとろけておいしかった。
そのときは食欲が無くてあまり食べなかったが、おいしくいただけたし奢っていただけたし嬉しかった。
ケーキさんは男共の騒がしさや悪ノリなんかに呆れているというスタンスだったが、豆腐さんを甘やかすときは自然に甘やかしていて凄いと思った。
彼女はなにを思って豆腐さんと付き合っているのだろう。
なにか彼女の胸を打つような出来事があったのだろうか。
豆腐ケーキカップルと別れ、私はコサラダさんと二人で帰ることになった。
コサラダさんは恐らく豆腐さんに何かしら吹き込まれて炊きつけられていて、私を紅茶の店に誘ってくれた。
私はあいにくジュースしか飲まない味覚崩壊野郎なので、甘くない紅茶は専門外である。もしかしたらなにかしら考えてそのお店にしてくれたのかもしれない。申し訳ない。
クッキーという種類の紅茶の葉っぱがまんまクッキーの匂いだった。昔飲んだクッキーのお酒を思い出した。もしかしたら同じ種類の植物かなにかが入っているのかもしれない。
ティーバッグになっているミルクティー用の茶葉を買った。
帰りの車でアジカンのCD流してた。なにか話したような気もしたけど記憶に無い。
覚えておけるような人間になりたいなと思った。今。